風邪に抗生物質は効果なし
風邪に効く薬はないというのは医学界の常識です。鼻水を止める、咳を止める、熱を下げる、このように症状を止める対症療法薬はありますが、ウイルスを殺す抗ウイルス薬はありません。
抗生物質が処方されるのは風邪に細菌感染が合併している場合です。予防投与として処方する場合もありますが、細菌感染していないのに抗生物質を飲むと腸内環境を脆弱化させる原因となります。
診療所の6割が風邪に抗菌剤
うちの近所の小児科の先生は薬が大好き。風邪でもアレルギーでもとにかく薬を山ほど処方します。
患者さんから「心配なので余分にください」とリクエストがあると、「いいですよ〜」と簡単に処方してしまいます。薬についてよく理解していない患者さんたちはその余った薬をスットクして、次に風邪をひいたときに飲ませてしまいます。
私のママ友の中には、
「○○先生って親切なのよ〜。いつでも沢山薬を出してくれるから!ため込んでおけば次の時に使えるからね!」
そう薬好きの方がいます。
私は心の中で・・・「それはいけないよー。自己判断でそんなに抗生物質を飲ましてはダメなのに」と思っていますが、なかなか面と向かって注意をすることはできません。それは医師の仕事ですしね。
先日、スマホでニュースを見ていたら、「効かないのに・・・診療所の6割は風邪に抗菌薬」と出ていました。
どういうことなのでしょう?
本当に効かないの?
ならなぜ処方されるの?
そんな皆様の疑問にお答えして、さらに抗生物質と腸内細菌の関係についても考えてみたいと思います。
朝日新聞デジタルニュース
朝日新聞デジタルニュースに掲載された内容です。
抗生物質などの抗菌薬はウイルス性の風邪には効かないにもかかわらず、約6割の診療所は患者から強く求められると処方していることが、わかった。日本化学療法学会と日本感染症学会の合同調査委員会が1日、岡山市で開かれている学術集会で発表した。抗菌薬を誤って多用すると薬が効かなくなる耐性菌が増えることから、国は適正処方を求めている。
今年2月、無作為に選んだ全国1490カ所の診療所に郵送でアンケートをして、269カ所から有効回答を得た。ウイルス性の普通の風邪「感冒」と診断した患者やその家族が抗菌薬を希望した場合、「希望通り処方する」が12・7%、「説明しても納得しなければ処方する」が50・4%で、計約6割を占めた。
また過去1年間で感冒と診断した患者にどれくらいの割合で抗菌薬を出したかを尋ねたところ、「4割超」と答えた診療所が20・2%、「2割以下」と答えた診療所は62%だった。処方した理由は、「重症化予防」(29・8%)や「二次感染の予防」(25・8%)などで、医学的根拠が乏しいと思われる理由だった。
厚生労働省は普通の風邪に抗菌薬を使うことを推奨していない。適正使用に向けて医師向けの手引を配ったり、患者に説明して抗菌薬の使用を控えた場合に報酬が上乗せされる仕組みを導入したりしている。
風邪に抗生物質を処方する理由とは?
かぜの原因はウイルス感染です。一般的な常識にしたがえば、かぜの治療に抗生物質は必要ないということになります。しかし、病院に受診するような重篤な風邪の中には、細菌に二次感染していることが多いのも事実です。鼻水の色が汚かったり、痰の色が汚かったり、喉が凄く腫れていたり、そんな症状の時には抗生物質が必要になります。ウイルス感染で抵抗力が弱くなっているところに他の細菌にも感染してしまった可能性があります。
5〜10%の割合で細菌及び微生物による感染症が含まれていると言われています。そのため風邪で病院にかかった時に「抗生物質」を処方されたという経験をお持ちの方は多いと思います。
その理由の多くは、
・2次感染予防
・患者さんの希望
であると思われます。
いままでは「抗生物質」の副作用があまり重要視されていなかったため、風邪で抗生剤を処方するということが大きな問題とされていませんでした。しかし、抗生剤の乱用による「耐性菌の出現」「腸内細菌バランスの変化」が問題となり、今回「風邪による抗生物質の処方」がクローズアップされるようになりました。
抗生物質は正しく使う「腸内細菌と耐性菌」
細菌に感染した時に重篤化を防ぐために抗生物質は必要不可欠です。しかし、普段から気軽に内服していると耐性菌があらわれ肝心なときに効き目が悪くなります。また、自分が本来持っていた腸内細菌バランスを崩してしまうため、抵抗力を低下させ他の病気を引き起こしやすくなってしまいます。
例えば喘息、こちらは因果関係が解明されています。
「抗生物質で腸内細菌のバランスが崩れると、ぜんそくが悪化する仕組みを動物実験で明らかにできた」。筑波大学医学医療系の渋谷彰教授はこう話す。マウスに抗生物質を与えると乳酸菌などが減る一方でカビの一種であるカンジダ菌が異常に増殖。通常は無害なカンジダ菌が作り出す物質が血液を通じて大量に肺に達し、ぜんそくがひどくなった。抗生物質の種類によって異なるが、最も多い場合は2週間で腸内のカンジダ菌が通常の100万倍に増えた。
大学病院の研究室からも様々な論文が発表されています。
各種抗生剤投与による腸内細菌叢の変動:慶應義塾大学病院
「体が弱いから・・・」「小さいころから風邪を引きやすくて・・・」
体質のせいだと思っていた不調の原因が、じつは抗生物質が引き金になっていることがあるかもしれません。抗生物質の投与は慎重に。自己判断は絶対に止めましょう。私は自分の子供に簡単には抗生物質は飲ませません。お陰で体だけは丈夫に育ちました!
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