ピロリ菌除菌が効かない?「ピロリ菌は陰性、呼気検査が陽性になるA型胃炎とは?」日経メディカル

ピロリ菌除菌が効かない?

 

日本はピロリ菌大国でした。
その感染経路は完全には明らかにはなっていませんが、井戸水が原因なのでは?と言われています。
上下水道設備が整っていない不衛生な環境が原因だと考えられ、発展途上国ではまだ感染率が高い国も少なくありません。

 

しかし、大人になってから井戸水を飲んだとしても感染するというわけではありません。
成人では免疫防御機能が働くため、ピロリ菌が自然免疫力で退治され一過性の胃炎で終わり感染しないものと言われています。
ところが免疫がまだ完全でない0歳から12歳くらいまでにピロリ菌を取り込むと、菌を排除することができず定着してしまい住み着いてしまうのです。

 

ピロリ菌が胃がんの原因という説は定着しつつありますが、最近の研究でどうやら「それだけではない?」ということが解りつつあります。
呼気検査で陽性になり除菌をしたけれど、じつはもともとピロリ菌はいなかった!
というケースの報告が増えているようです。

 

本日は・・・日経メディカル8月号に特集されていたA型胃炎についてご報告したいと思います。

 

 

ピロリ菌がいなければ胃がんにならない!は違うらしい

 

ピロリ菌が発見されたのは30年前、日本で保険適応になったのは2013年からです。
胃がんの元凶といわれ、ピロリ菌がいなければ胃がんにならないという考え方が最近の通説。

 

「胃がんの99%はピロリ菌感染がベースにあります。ピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べると、20~30倍も胃がんになる確率が高いとされています。塩分の過剰摂取といった食生活や遺伝などによる、ピロリ菌に感染していない人の胃がんも0.5~1%は残るものの、ごくまれといっていいでしょう。現在、日本は胃がんの最多発国といわれていますが、今後、感染率の低下が進めば、並行して胃がんもまれになっていくと思います」

NIKKEY STYLE より

 

しかしこの説だけでは説明がつかない症例が報告されるようになりました。
ピロリ菌の呼気検査では陽性とでるものの、内視鏡の検査ではピロリ菌が発見されないのです。
除菌をしても呼気検査で陰性にならず、繰り返し除菌をすることになるという「泥沼除菌」につながることに警告が鳴らされました。

 

 

呼気検査が陽性になるA型胃炎とは?

 

ここからはちょっと小難しいので、読みにくい方は結論までスルーして下さい。

 

A型胃炎??聞き慣れない病名ですよね。

 

これはかなり古い提唱で慢性胃炎を示す分類です。

・A型胃炎・・・抗胃壁細胞抗体陽性

・B型胃炎・・・抗胃壁細胞抗体陰性、ピロリ菌感染によるものが多い

 

このA型胃炎は教科書的には日本人10万人のうち3〜4人くらいとされていましたが、実際の検査では100倍以上の頻度で見つかり注目が高まっています。

 

A型胃炎は正確には自己免疫性胃炎(AIG)と呼ばれ、自己抗体によって胃体部にある胃底腺の壁細胞が攻撃され胃酸の分泌が減少します。

 

そのため胃の前庭部というところはダメージを受けにくいのですが、胃の真ん中「胃体部」というところが萎縮しやすくなります。

 

萎縮性胃炎が胃がんを招きやすいということは以前からお伝えしていますが・・・
粘膜が萎縮すると胃壁による内分泌も減少することからビタミンB12が吸収されず、悪性貧血の原因にもなります。このほか低酸素状態でミネラルの吸収が悪くなり鉄欠乏や亜鉛欠乏なども起こってきます。

 

 

 

ABC検診D群の方は経過観察を・・・

 

ピロリ菌の発見から「胃がん=ピロリ菌保有者」というイメージが強く植え付けられています。

 

胃がん検診のひとつの指標としてABC検診というものがありますが、ピロリ菌所有者のA群以外は「がんリスク免罪者」という考え方が定着しつつあります。

 

ABC検診とは?

 

しかし、ピロリ菌を所有していなくても胃炎の既往がある方はちょっとご注意を。
ABC検診のD群という方は、注意して経過を観察して下さい。
ピロリ菌抗体陰性、ペプシノーゲン陽性の方です。
つまりピロリ菌を持っていないのに「呼気検査が陽性」に出てしまう方。

 

これまで萎縮性胃炎が進行している人は、ピロリ感染が高度に進行し、自然に除菌されてきたとされていましたが、じつはピロリ菌に感染していない人も多く含まれることが解ってきました。

 

 

自己免疫性胃炎(AIG)がどんな経過をたどり胃がんになるというのかは、まだまだ解明されない点が多いのですがこれから注目しなければならない点だと思います。
今日はかなりマニアックな視点になってしまいましたが・・・

 

つまり!なにが言いたいのかと言いますと・・・

 

ピロリ菌がいないからといって安心するな!
ということです。
胃粘膜の経時的な観察をすることは大切です。
1年に1度は胃内視鏡検査を受けましょう
というのが本日の結論です。

 

出典:日経メディカルより

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