薬の副作用が腸の動きを止めているのかもしれない
私が脳神経内科に回されたのは、看護師2年目のことでした。
脳神経内科の看護師が不足し、3ヶ月間のヘルプスタッフということで、脳神経内科病棟(パーキンソン病や神経系の難病の患者さんが多い)で働いた経験があります。
その「脳神経内科」での仕事はいまでも強烈に覚えています。
消化器外科病棟で働いていた私にとって、脳神経内科病棟という所はとても異色な空気を感じました。
なぜかというと、ほとんど全員の患者さんが排泄障害を抱えており、私達の業務の中で多くの時間を「排泄介助、おむつ交換」に費やさなければならなかったからです。
パーキンソン病などの難病を抱える方は、薬の副作用や筋力低下から、排便のコントロールが上手くいかなくなります。治療に使われる抗うつ薬は消化管の動きを止めるため、便秘に悩まされることが多くなります。
そのため下剤を常用しますが、刺激性下剤のような強い下剤を使わないと出ないため、「全く出ない」もしくは「水様便」になってしまうのです。
私達は毎日のように汚れたシーツやパジャマを交換し、便臭にまみれていました。
最近でも、患者さんや読者の方からこんなご相談を受けることがあります。
不安で薬(抗うつ薬)は手放せないけれど、便秘になるので困るんです。
どうしたら良いのでしょうか?
この問題はなかなか解決が難しいのですが、薬の作用と副作用をよく理解し生活リズムを整えることで改善される症状もあります。
本日は・・・薬の副作用と便秘について考えてみましょう。
便秘の原因は薬かも?
便秘の原因として、食物繊維や水分の摂取不足、運動不足、ストレス、環境の変化など様々な要因が挙げられます。
年齢と共に腸の機能も低下するため、このような原因を解決し出来るだけ「排便の自立」を目指して行かなければなりません。
甲状腺疾患、多発性硬化症、パーキンソン病、うつ病といった神経系や内分泌系の異常によって起こることもあります。
それらの病気の治療に使われる薬の副作用によって便秘になる場合もあります。
鎮痛剤、抗うつ剤、精神安定剤、血圧の薬、利尿剤、カルシウム剤、アルミニウムを含む制酸剤というような薬が該当します。
薬の副作用で便秘になっているからと下剤を毎日使用して依存症になり、さらに状況を悪くしているケースも一部にあります。
抗コリン作用が便秘を引き起こす
口渇、便秘などは抗コリン作用と言って、自律神経系の薬に現われる副作用です。
胃や腸などの消化管の運動には、副交感神経の伝達物質となるアセチルコリンが関わり、アセチルコリンの作用が亢進している状態では胃や腸、食道などの痙攣、炎症、潰瘍などの症状を引き起こし、腹痛や下痢などが起こる場合があります。
抗うつ剤などの「抗コリン作用」とは、消化管におけるアセチルコリンの働きを抑えるものです。
つまり、副交感神経の働きをおさえ交感神経の活動が盛んになるため、消化管の運動が鈍くなってしまうわけです。
薬の副作用に対する対処法
実際に病院ではこんな報告があります。
当院のような精神科では、抗精神病薬や抗パーキンソン薬や抗うつ剤の副作用(抗コリン作用)により、便秘で困っている患者様が多いのです。
便秘になると、お腹が張って苦しくなります。停滞した糞便によって腸管が無理やり押し広げられ、腸管の筋肉(平滑筋)の断裂が起こると、巨大結腸になります。それを避ける目的で長期に下剤や浣腸を用いると、結腸粘膜の知覚が鈍麻して排便の反射機能が起こりにくくなり、ひどい場合は麻痺性イレウスを引き起こす場合もあります。
また、アントラキノン系の刺激性下剤(センナ、大黄など)は、大腸黒皮症(メラノーシス コリ)などの有害な腸機能障害をきたす危険性もあるといわれています。
このようなことを踏まえると、やはり便秘治療には下剤投与に頼るのではなく、腸内環境を整えることが重要になると思います。
ヒトでの経口摂取において、摂取期間中、糞便ビフィズス菌群占有率が上昇し、排便状態改善効果が報告されているのが「ラクトスクロース(以下、LS)」です。
LSは、1日当たり2~3 g程度の摂取量で効果が期待でき、さらに下痢を起こしにくいという特長があります。
こうした点から多種あるオリゴ糖の中でも安全性が高いと判断し、便秘で苦しむ当院の患者様に投与してみることにしました。
調査方法:当院の認知症病棟入院中の患者様たち(n=20/平均年齢76.6歳)に、LS 3gを麦茶150㏄に溶かし、日常の水分補給時に飲用してもらいました。
調査期間:平成20年4月22日から4週間を非摂取期とし、その後、LSを飲用して2カ月後の4週間と、1年後の4週間、2回に分けて効果を調べました。
●結果
排便回数は、2カ月後のときには有意な増加は見られませんでしたが、1年後には有意な増加が認められました。ただし、当院ではイレウス防止のため排便回数の確保を進めており、排便の頻度だけでLS投与の効果を判断することはできず、下剤や浣腸の使用が減少したか否かをみる必要がありました。
1年後に排便回数が増加した時点で、定期下剤の減量が示唆されました。(図1)
新阿武山病院 栄養・給食室長 井戸由美子先生の報告より
薬の副作用と上手に向き合い、便秘予防に効果的なのは「オリゴ糖」のようですね。
やっぱり「ビフィズス菌」+「食物繊維」+「オリゴ糖」の組み合わせが最強タッグですチョキ
皆様も普段の生活に取り入れてみて下さいビックリマーク
腸内環境が整えば、抗うつ剤から卒業できる!
日々の小さな積み重ねが腸の環境を変えて行きます。
まずは「今日できる腸活」始めて行きましょう。